音のない世界、聞こえない世界、あなたに少しだけ知っていてほしい、
ろう者の方々の気持ち、私たちが生きる社会の現実。
お互いに伝えたくても、伝えられないもどかしさ、
それでもあきらめずに伝えることが出来た時の喜び。
手話は、聞こえない方々の大切な言語であり、
偏見や差別など、様々な社会の壁と闘ってきた長い歴史があります。
今日まで出逢った、たくさんの聞こえない方々とのふれあいの中で、
私は、その歴史の中に、なくしてはならない深い哀しみ、苦しみ、
喜びを知りました。
そして、たくさんの手が、瞳が、私に語ってくれた声なき声を伝えたい、
伝えなければ、と思うようになりました。
その伝える手段として、手話はもちろんのこと、
演劇や音楽との融合を試みながら修練して参りました。
まだまだ未熟ながら、
そんな私が、生涯をかけて取り組んで行こうと心に決めたこと。
この女性はその中のお一人で、長崎で被爆され自らが語り部となり、
その想いを語り継いできた、山崎榮子さんという方です。
目の前に繰り広げられた、凄まじい光景、
身体に強い振動を受けた直後に飛んでくる火の塊、
見たこともない黒い雨、瀕死の状態で川に飛び込む人々、
ただでさえ恐ろしいのに、聞こえないなかでこれを目の当たりにしたら、、、
平和な現代で暮らす私たちには想像を絶する出来事です。
広島や長崎の原爆投下により、
とても多くの方々が亡くなり、被爆され大変な思いをされたのですが、
山崎さんは、ろう被爆者としての実体験を伝承してこられた、
数少ない語り部(手話による)です。
ろう者の方々が体験した事実を、生きてきた歴史を知ってほしい、
そして、今を生きる私たちに共に出来ることを、
共に考えるきっかけになれたなら、、、そんな願いをこめて、
戦争のない真の平和な社会、障害のある、ないにかかわらず、誰もが
分け隔てなく暮らせる社会への実現に向けて、その一端を担うことが出来たなら、
私のこの手が心と心を繋ぐ何かになることが出来たなら、
これ以上の喜びはありません。
アウルロード代表 Sign Artist 手話表現者 杉野実奈